コロナ禍の影響で、多くの旅館やホテルが経営難に直面している中、国が提供する「高付加価値改修」補助金は、救いの手となった。この補助金を利用すれば、比較的少ない負担で客室などをリニューアルすることができ、ホテルの魅力アップや収益向上が期待できるということで、多くのホテルがこの補助金を利用してきた。
しかしながら、その結果、
「どこもかしこも新しい」
という状況が生まれ、ホテルの差別化が失われるという問題が浮上している。リニューアル競争が行き過ぎた結果、期待ほどの稼働率を見込めない宿も散見されるようになってきた。
そもそも、客室をリニューアルする目的は、他のホテルとの差別化を図るためである。しかし、単に客室を新しくするだけでは、ホテルの魅力アップや収益向上には繋がらない。むしろ、ホテルが提供するサービスやコンセプト、その他の「ソフト面」を差別化することが、真の差別化と言える。
当社では、リニューアル競争に乗ることなく、常に「ソフト面」の強化に注力してきた。例えば、地元の食材を使用した料理や、特別なアクティビティを提供するなど、地域やホテルのコンセプトに合わせたサービスを展開することで、多様なゲストニーズに応えている。
また、リニューアル費用に比べて、ソフト面での商品開発は、比較的ローコストで済むことも大きなメリットである。客室をリニューアルするためには、多額の費用が必要であるが、ソフト面での商品開発は、創意工夫とアイデアがあれば、比較的安価で実現できる。例えば、スタッフの接客力を向上させるための研修や、季節限定のイベントを企画することなどは、比較的簡単に実現できる方法である。
さらに、ソフト面への投資は、顧客ロイヤルティの向上にもつながる。ホテルで提供するサービスやアクティビティが、ゲストにとって思い出に残るものであれば、再度の宿泊を希望する可能性が高くなる。また、口コミでの評判が広がれば、新たなゲスト獲得にもつながる。
しかしながら、ソフト面への投資にも注意点がある。例えば、新しいサービスやアクティビティを導入する場合、ゲストのニーズや嗜好に合わせて提供しなければならない。また、そのサービスやアクティビティを提供するスタッフには、適切な研修が必要である。顧客ロイヤルティを向上させるためには、スタッフの質の向上も欠かせない要素である。
ソフト面への投資は、リニューアル競争に陥っているホテルにとっては、効果的な差別化戦略となる。しかしながら、その投資には、適切な戦略や実施方法が必要である。ホテルが提供するサービスやアクティビティを客に思い出に残るものにすることができれば、リピート率の向上や新規顧客獲得につながる可能性が高くなる。今こそ、リニューアル競争から脱却し、ソフト面への投資に注力する時期である。