30年以上前に国内の旅館ホテルには露天風呂ブームというものがありました。
その頃、露天風呂というのは秘境のひなびた温泉旅館にしかないもので、有名温泉地のお風呂にはそのようなものはありませんでした。どちらかというとローマ風呂などがもてはやされていた時代です。
そして時間は過ぎて、約15年程前から露天風呂付客室ブームが小規模高級温泉宿と一緒に広がっていきました。
通常であれば、長い廊下を歩いてわざわざ川辺の露天風呂まで歩いていく必要があったのですが、お部屋の窓辺になんと小さな露天風呂があるのです。誰にも邪魔されることなく、ゆっくりとのんびりと入ることが出来るのです。その特異な景色や需要の大きさから大ブームになり大型宿であろうが中型であろうが、みんな露天風呂付客室を新設して、単価アップを狙っていきました。
あれから15年。
露天風呂付客室の現状としては、完全に供給過剰となりこれからは価格競争の時代がやってきます。以前から露天風呂付客室のヘビーユーザーはこれからも利用しますが、1回限りというお客様は供給過剰により一巡していきます。
このように宿の経営支えるような商品でもいつかは、真似されたり、商品自体が劣化して当初のクオリティを保てなかったりします。それはいきなり起こることではなく、じわじわじわじわと劣化していき、偶発的なアクシデントでそれが露呈します。偶発的なアクシデントとは例えば自然災害だったり、新しい競合ライバルの出現だったりします。
これは、この10年ほどで顕著になっています。なぜかというとクチコミや評価サイト、SNSなどの普及により情報伝達スピードが圧倒的に早くなっているからです。これは今後もスピードアップしていき、動画撮影などによりこれまでの平面的な情報が立体的になり、より商品劣化スピードは加速していきます。
では、どうしていけばいいのか?
それは、領域を外すことです。
競合する領域に居る限り常に模倣品の造成や真似されてしまい、商品価値は低下(劣化)していきます。それまで高付加価値とされていたものも、供給過剰により価値がなくなります。しかし、同じ領域で勝負(競合)しないことによりそこに模倣やパクリは発生しなくなります。この考え方は当たり前ですよね。宿のみなさんが役所の受付手順を真似しないように、パクリの対象ではなくなるのです。一般的にはブルーオーシャン戦略と言われ、「自分だけの海(オンリーワン戦略)」と言えば分かりやすいでしょうか。
では、どうやって領域を外せばいいか?
それは、コンセプトを持つことです。
コンセプトを宿全体に浸透させることにより、各パーツはどこにでもあるような似たようなものなのですが、それが集まった時にパワーを持つのがコンセプト経営です。
無印良品やドン・キホーテなどがその良い例です。
あと、最後に今回の冒頭写真に選んだファイアープレイス(暖炉)が今後の高付加価値の筆頭となります。覚えておいてくださいね。リッツカールトンを始め海外の高級ホテルはどんどんファイアープレイス付の客室や施設を作っています。恐らく星のやさん辺りが作り始めて、順次拡がっていくと思います。よく覚えておいてください。