1. 夜鳴きラーメンのルーツと拡大する流れ
宿泊業界で「夜鳴きラーメン」や「夜鳴きそば」を提供し始めたのは、ドーミーインが最初ではないかと記憶している。

もともと素泊まり客向けの付加価値として、小腹を満たす夜食サービスとして導入され、
狭い客室に滞在するお客様を広い空間(ラウンジなど)へ誘導する効果もあった。
しかし、近年ではオールインクルーシブ宿の台頭や、無料サービス競争の激化により、
本来の目的を理解せずに導入する宿泊施設が増えている。
このサービスにはメリットもあるが、無計画に導入すると、宿の評価や収益に悪影響を及ぼす可能性もある。
今回は、夜鳴きラーメンが宿泊業界にもたらす「功罪」を整理し、
導入前に考えるべきポイントを解説する。
2. 夜鳴きラーメンのプラス面(メリット)

① 予約の誘導効果
無料サービスとしてのインパクトが強く、「宿の売り」としてPRしやすい。
特にビジネスホテルやカジュアルな旅館では、付加価値のあるサービスが予約動機になり得る。
② 夕食なし宿の満足度アップ
夕食を提供しない宿にとっては、深夜の軽食サービスが顧客満足度向上に寄与する。
「夜食があるなら、ここに泊まろう」と選ばれる理由になる。
③ 客室の狭さをカバーする効果
狭い客室だと宿泊者は閉塞感を覚えやすいが、夜鳴きラーメンを提供することで館内の別の空間に移動する動線が生まれ、滞在体験が向上する。
3. 夜鳴きラーメンのマイナス面(デメリット)

① 一泊二食の宿では、食事の満足度低下を招く
夕食後、無料だからと夜鳴きラーメンを食べる宿泊客が増えると、翌朝の朝食を満腹状態で迎えてしまう。
結果、朝食に対する評価が下がり、**「朝食のクチコミ点数が伸びない」**という現象が起こり得る。
実際に、腹ペコの状態では何を食べても美味しいが、満腹時は食事の評価が下がるのは周知の事実だ。
② 深夜のスタッフを確保する難しさ
夜鳴きラーメンを提供するには、深夜帯のスタッフ配置が必要になる。
宿泊業界はすでに人手不足が深刻であり、深夜スタッフの確保が難しい。
結果として、少人数で無理をして対応すると、業務の負担が増し、従業員満足度の低下を招く。
③ 目的を理解せず導入すると、ブランド価値を損なう
ビジネスホテルのドーミーインが、「素泊まり客向けの満足度向上策」として導入したものを、
高級宿やオールインクルーシブ宿が無計画にパクると、本来の宿の魅力を損なうリスクがある。
特に、料理の質やコース構成にこだわる宿が無理に夜鳴きラーメンを導入すると、
お客様の食事満足度を下げ、結果として宿の評価を悪化させる可能性がある。
4. 成功する宿は「胃袋をコントロール」する
賢い経営者は、お客様の胃袋をコントロールする。
賢くない経営者は、考えることなく満足を押し付け、結果として評価を落とす。
例えば、一泊二食付きの宿で「満足度の高い夕食」を提供しているなら、
「夜鳴きラーメン」ではなく、食事の余韻を引き出す工夫をするべきだ。
✅ 「夜食を提供すること」ではなく、「お客様の食事体験を最適化すること」を考えよう。
✅ 「食べさせる」ではなく、「食べたくなる流れ」を作ることが重要。
夜鳴きラーメンは、導入すれば満足度が上がる魔法のサービスではない。
宿泊施設のコンセプトや提供する食事の方向性を考えた上で、戦略的に取り入れることが成功の鍵となる。
5. まとめ:夜鳴きラーメンは宿泊施設に本当に必要か?
✔ 素泊まり主体の宿泊施設では、無料サービスとして強力なPR要素となる。
✔ 一泊二食付きの旅館・ホテルでは、食事の満足度を下げるリスクがある。
✔ 深夜のスタッフ確保が難しいため、人手不足の宿では逆効果になる可能性も。
✔ 導入する前に「なぜ提供するのか」「本当に自社の強みになるのか」を考えるべき。
競争が激化する宿泊業界において、「無料サービス」は慎重に取り入れるべき要素の一つだ。
単なる模倣ではなく、「宿泊客の体験を向上させるサービス設計」が、宿の未来を決めることになる。
あなたの宿にとって、夜鳴きラーメンは本当に必要ですか?