国内の旅館で「これは勉強になるな!」と思うのは、星野リゾートだけ。
経営コンサルティングという仕事をしてもう10年になり、かなり多くの宿を見てきましたが、正直なところ上記の通りです。
私が10年以上前に実家の旅館でテストしていたことを今やっても、「こんなの聞いた事が無い」と言われるのが現在の旅館業界です。
他業界に比べて未だに圧倒的に遅れています。
今回の全国旅行支援で更にその進化は鈍化すると思うので、当社がサポートする宿にとってはありがたい話です。
しかし、同じ宿泊業界の別ジャンルが進化しているので、ご紹介しましょう。
女性をターゲットの26種の小鉢朝食バイキング
5、6年前までのビジネスホテルの朝食バイキングと言えば、薄くて硬い焼き鮭、味のしないオムレツ型卵焼き、崎陽軒サイズでスカスカで味濃いめのシュウマイと「まあビジホだから仕方がないか」が当たり前でした。
しかし、現在ではインバウンド需要を見込んだビジネスホテルが乱立し過剰供給状態から、さらにコロナ禍でガラガラが当たり前の状態。国内需要に目を向けて差別化を図るビジホの一手が朝食バイキングの見直しでした。
最近の新しいビジホの多くが、基本設定として「綺麗な客室」+「温泉」を持っており、以前は圧倒的な差別化要因だった「温泉」が当たり前になっています。
そこで、ホテルミュッセ銀座名鉄の朝食バイキングです。
https://www.m-inn.com/musse/ginza/restaurant/
「銀座朝食ラボ」という名で、一般にも開放されたレストランは、手作り、ごはん、小鉢、東京食材をこだわりに作られているそうです。
百聞は一見に如かずで、行った事が無いので評価は抽象的になりますが、恐らく見た目や想像より美味しいと思います。何よりもSNS映えを意識させる小鉢入れやおひつはナイスですね。(ちなみにこのおひつは、1台15万位するのでそれなりの投資はされています。)
https://youtu.be/-B_ae9BAmbE?t=143
一見すると「都市型ホテルの3000円の朝食バイキング」
https://youtu.be/lMv0h9hRu7c?t=456
松山市の中心地にあるビジネスホテル「ダイワロイネット松山」の朝食バイキングです。
https://www.daiwaroynet.jp/matsuyama/facilities/
こちらは、テナントイン型で運営されておりますが、予約する段階では直営っぽい見え方なので、朝食写真を交えたプラン一覧を見るとホテルの格が上がっています。こちらの写真を見ると「良さそうなホテルだな、泊まりたいな」と思わせますよね。
「吉長」という和食店と全国で店舗展開しているイタリアンレストラン「サルバトーレクオモ」の2店舗が入っています。
ビジホで焼きたてオムレツ
先日宿泊したあるバス会社系ビジホの朝食です。
https://www.sanco-inn.co.jp/ise/breakfast/
私のお皿の様子を見てもらうと分かる通り、恐らくパックされた既製品を温め直す感じの料理が並んでいるのですが、オムレツだけライブコーナーで白髪のお父さんが一人で手作りしてくれます。ほどよく火が通りチーズ入りでとても美味しかったです。
このホテルも「きれいな客室+温泉」のビジホですが、周辺に海外大手系ビジホなどが乱立し差別化を図っているんだと思います。
安定提供ができないのかHPには掲載されていませんが、これが継続できたらすごいです。
結果、旅館は進化が止まっている
3軒のビジホを例に出しましたが、コロナの3年間でなんとなく集客できた旅館や観光ホテルと、絶望的にまで売上が下がったビジホでは危機感が違ったに尽きるのかもしれません。
正直、ビジホの進化と言ってもそう目新しいものではありません。既存にあるけけど「ビジホにあったらいいな」を単にくっつけただけです。
でも、旅館では「旅館にあったらいいな」をくっつけるのに5年、10年かかりますよね。「旅館はこうじゃなくてはいけない」とか、「オペレーション上、無理があるのでなかなかできない」とか。
いろんな宿で新しい提案をすると決まって聞こえてくるセリフです。
そんな悠長な事を言っている間に、旅館や観光ホテルが持っていた1泊2食のお客様をどんどんビジホが奪い取っているのです。
「いや、そんなことはないでしょ。私は旅館に泊まるよ」と思いのは、ぜひ一度ツインのお部屋を持ったビジホに泊まってみて下さい。いつも自館に泊まってくれるような夫婦だったり、ファミリー層が近くの居酒屋で食事した後、温泉に入って部屋に戻っていく姿を見られますよ。
進化を止めてはいけません。