民泊Airbnbの共同創業者ゲビア氏に聞いてきた、旅行事業拡大の真意から日本での新展開まで

世界中のAirbnbホストが集まる「Airbnb Open」が11月中旬ロサンゼルスで開催された。このイベントは、一昨年のサンフランシスコ、昨年のパリに続く3回目。今年は新しいサービス「トリップ(Trips)」の発表もあったことから、世界中から約7000人、ジャーナリスト170人が集結し、注目を集めた。

宿泊(民泊)に加えて、体験(Experiences)プラットフォームも始めるAirbnb。その真意はどこにあるのか。共同創業者兼CPOのジョー・ゲビア氏に聞いてみた。

「旅行をマジカルで簡単に」—— CEOチェスキー氏

「今では誰でも簡単に旅行ができるが、マジカルではない。現実は、ただバスに乗っているだけということも多い。旅行前にガイドブックやアプリ、友人からの情報などで旅行先のことをいろいろと調べるが、その情報量は膨大だ。私たちは旅行をよりよくしたいと思った。旅行はマジカルで簡単であることが大切だ」。

Airbnb Open で共同創業者兼CEOのブライアン・チェスキー氏はそう話し、新サービス「トリップ」のローンチを発表した。

Airbnbは、これまでの宿泊リスティングを「家(Homes)」としたうえで、新たに「体験(Experiences)」と「スポット(Places)」をプラットフォームに追加。全体を「トリップ(Trips)」と定義した。「マジカルとは、普通の生活から非日常に入り、そこで何かにチャレンジしてみること。旅行者とは映画の中のヒーローのようなものだ」とチェスキー氏は話す。今後は、レストラン予約プラットフォームのResyとの提携で、現地のレストランを直接予約できるようにするほか、「フライト」や「サービス」の分野にまで領域を広げる計画だ。

ブライアン・チェスキー氏が「体験」を発表

ブライアン・チェスキー氏が「体験」を発表

体験によってよりディープにローカルを楽しむ

ゲビア氏はトラベルボイス編集部のインタビューに応え、「ブライアン、ネイサン・ブレチャジック(共同創業者兼CTO)、そして私は2012年頃から、次の戦略を話し合い、さらに私たちの野心を拡大させようと考えてきた。それが旅行全体へのアプローチ。たとえば、東京に旅行するとき、旅行者は東京で何ができるだろうと考えるが、あまりにもやることが多すぎる。そこを手助けしたいと考えた」とトリップの発想について説明した。

すでにAirbnbのリスティング自体が旅行のユニークな体験として世界で広まっており、地元のホストが旅行者であるゲストと一緒にローカルを楽しむスタイルが好まれているが、ゲビア氏は「体験ホストは、リスティングホストよりももっとディープなローカル体験を提供してくれるはずだ」と自信を示す。

現在のところ体験が提供されている都市は東京も含めて世界12都市。リストされている体験は500を超え、東京でも50以上の体験がリストされている。ローカル色に重きが置かれ、たとえば、「Ramen & Tasting」「Big in Bonsai」「Exquisite Ikebana」「MISO Culture」など日本らしい体験が並ぶ。各都市とも、アート、ファッション、エンターテイメント、スポーツ、健康、自然、フード&ドリンク、テクノロジー、ライフスタイル、歴史、社会貢献に分類され、フィルター検索することが可能になっている。

ゲビア氏自身、日本でのローカル体験を通して日本文化の奥深さを知ったという。「大分の宿坊に泊まったことがあるが、素晴らしい体験だった。朝5時半に起きて座禅。僧侶と一緒に温泉に入り、日本文化のことをいろいろと教えてくれた。帰国してから、ますます日本文化をリスペクトするようになった」と個人的な体験を明かす。

「現代の旅行では、案内板やガイドブックなどを見ながら目的地には容易に行けるが、ローカルコミュニティーとの関わり合いが少ないと思う。そこで、地域の一個人が体験ホストとなれば、旅行者にとってはその人たちがその文化の入口になるだろう」。

ローカルと個人。Airbnbが目指す方向性にブレはない。

「ただ、体験であればなんでもいいと言うわけではない。クオリティーは非常に重要」と強調する。Airbnbでは、体験の申請を受けたあと、それを審査し、ホストと会って、話し合いをしながらプログラムを作っていくという。

Airbnb Openに登壇した共同創業者のネイサン・ブレチャジック氏、ジョー・ゲビア氏、ブライアン・チェスキー氏(左から)

Airbnb Openに登壇した共同創業者のネイサン・ブレチャジック氏、ジョー・ゲビア氏、ブライアン・チェスキー氏(左から)

強みはひとつのアプリで簡単予約

体験を提供することで、いわゆるタビナカにも進出するAirbnbだが、先行事業者も多いことも事実。既存の旅行会社やOTAも着地型体験ツアーに力を入れている。

そうしたプロバイダーとの差別化に対するゲビア氏の解答は明快だ。「Airbnbの最大の強みはひとつのアプリで簡単に予約できること。それがAirbnbの大きなバリュー」。宿泊から体験まで。そして、将来的にはレストラン、フライト、地上交通まで、ひとつのプラットフォームで「トリップ」を扱う。Airbnbの野心は、スマートフォン時代の象徴といえるかもしれない。

地方創生にも注目、来年には「吉野杉の家」もリストに

Airbnbのキーワードのひとつがローカル。日本では、岩手県釜石市とパートナーシップを締結した。釜石市は2019年のラグビーワールドカップの開催地のひとつになることから、この提携を通じて日本だけでなく世界の旅行者を呼び込みたい考えだ。

また、2017年1月には、奈良県吉野町の吉野杉を使って建築した「吉野杉の家」を現地で物件として貸出す。1階はコミュニティースペースに、2階を旅行者向けのリスティングとする。ゲビア氏は「日本の地域創生は大きな課題だと認識している。Airbnbとして何ができるかを考えたとき、ひとつの答えが吉野杉の家だった」と背景を説明する。

「コミュニティースペースに酒蔵、寿司屋、箸職人など現地の職人が集まり、旅行者と交流できれば、新しいコミュニティーが生まれるのではないか。旅行者を呼び込めば、経済的な活性化にもなる。こうしたモデルは日本各地で展開できるのではないか」と話し、今後もイノベイティブな方法を探しながら、地方創生に貢献していきたい考えを示した。

夜のイベントも豪華。マルーン5のほか、サプライズとしてレディガガも登場した

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取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

 

 

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