リクルート旅行事業の新たなアプローチとは? 責任者に「じゃらん」から地域活性化の取組みまで聞いてきた

海外OTAの侵攻や異業種の参入など、競争が激しさを増すオンライン旅行市場。各社がしのぎを削るなか、「じゃらん.net」を運営するリクルートライフスタイルは、地域との連携を強め、現地の消費促進に力を入れている。

2012年から3年連続で2ケタ成長を続け、今年も熊本地震の影響を受けながらも堅調に推移するなか、宿泊予約サービスから旅行プロセス全体をカバーする旅行情報サービスへの転換を公言。新たなアプローチを始めたリクルートライフスタイルの取り組みを、執行役員旅行領域担当の宮本賢一郎氏に聞いてきた。

日本の観光の課題を競争力に

海外OTAに「勢いを感じている」としながらも、宮本氏は「地域への誘客を中心とする地域消費の拡大のために、マーケティングから商品化、現地消費までの一気通貫したフォロー体制で地域に貢献することが我々の考え」と、じゃらんの方向性を説明する。

というのも、2015年の国内観光消費額20兆円(2015年)のうち、訪日外国人1940万人による消費額は3.5兆円。「3年で3.5倍になったが、全体の中ではまだ小さいことを認識し、日本人の旅行需要を刺激し続ける必要がある」と考えるからだ。そのためには「日本人にとって魅力のある観光地作りを、地域とともに取り組んでいく。日本人が楽しめる観光地でなければ、外国人にも魅力的ではない」と、地域を活性化する重要性を強調する。

一方で、人口減少社会に入った日本では将来的に旅行需要が減少するのは必至のこと。しかし、現段階で「人口の減少以上に若者の旅行需要が減っている事実に、より強い問題意識を持っている」と、需要そのものの変化にも危機感をにじませる。

じゃらんが掲げる3つの基本方針「需要に応える」「需要を創る」「地域をともに創る」は、こうした日本の観光の課題に対峙し、魅力向上と需要の掘り起こしに挑戦する取り組み。同時に、「現地・地域消費の拡大にフォーカスして戦っていく。そのためのサポート体制の構築がキモになる」と、国内及び海外の競合相手に勝ち抜く要になるとも捉えている。

自治体・事業者・消費者の3方向へのアプローチ

じゃらんが発表した「一気通貫のサポート体制」とは、これまでも地域や事業者向けに提供していたサービス。以前から準備を進めてきたが、昨年7月に開始した「遊び・体験予約」で現地消費促進のコンテンツが充実し、旅行プロセス全体のサポートとして打ち出した。消費者向けでは、タビマエ~タビナカ~タビアトでのカスタマージャーニーでのアプローチが増えているが、それの観光地・事業者版と言えるだろう。

具体的には、観光資源の発掘や旅行者の実態把握などを目的とした調査や、商品化プログラム、需要喚起策といった各種サービスを、調査研究機関のじゃらんリサーチセンターと実施。その先の誘客や現地消費のコンテンツを、予約サービスのじゃらん.netで提供する。じゃらんは地域や事業者の情報発信のプラットフォームとし、旅行情報サービスとして位置付けていく。

2016年6月29日の「じゃらんフォーラム2016」で発表

2016年6月29日の「じゃらんフォーラム2016」で発表

すでにそれぞれ成果がでており、例えば若者の需要喚起策「マジ部」では昨年度、対象年齢の18~22歳の人口の約10%に相当する延べ58万人の動員に成功。また、「遊び・体験予約」は開始から約1年で掲載数が増加し、「多くのマッチングが生まれ、かなりの手ごたえを感じている」とアピールする。

今年3月には自治体や観光協会との連携を開始し、地域の観光情報サイトでのプラン販売をスタートした。九州観光推進機構や静岡県観光協会をはじめ、先ごろには栃木県日光市とも連携しており、さらに5か所の自治体・観光協会での取り組みが予定されているという。今後も、現地消費の拡充につながるタビナカ領域には、力を入れていく方針だ。

さらに特徴的なのは、業務支援サービス「Airシリーズ」で、観光および周辺業者にもアプローチすること。観光では特に、順番管理アプリ「Airウェイト」、「モバイル決済 for Airレジ」などで利用されており、「(効率化で生まれた)その時間を本来のおもてなしに使っていただくことで、一緒に旅行者の満足度向上に取り組みたい」と宮本氏。

Airウェイトでは、地域の回遊を促すクーポンの発行によって、導入した富岡製糸場では入場待ちの時間に年間3000万円の現地消費を生み出すなど、地域への経済効果も立証されたという。地域や事業者とともに課題に向き合い、観光地を作り、旅行者の満足度向上を目指す取り組みで生まれる信頼感も、競合OTAに対する優位性になりそうだ。

インバウンドでも地域の魅力づくり、法人サービスも強化

もちろん、上記以外にも様々な取り組みを行なっている。例えばインバウンドも今後の増加を見込み、強化している分野。じゃらんのソースマーケットは韓国、台湾、香港、中国が全体の7割を占めており、旅行先は東京、大阪に加えて、韓国の旅行者の多い九州の人気も強い。

そこで、旅行先の分散を目的にインバウンドでも地域の魅力発信に力を入れており、今年3月には農協観光、ABCクッキングスタジオなどとグリーンツーリズムで異業種連携も実施。農産物や食をテーマにしたモニターツアーで、地域の魅力をアピールする。あわせて「食」や「農」をコンテンツとする、訪日グリーンツーリズムの商品化を図る地域を広げていくという取り組みだ。

さらに昨年11月からは、海外の旅行会社との業務提携も拡充。今後、インバウンドでも個人旅行化が進むなか、じゃらんの在庫システムを連携して集客につなげる。まずは訪日客の扱いの多い上記4か国地域から取り組んでいく。

このほか、国内市場では法人向けの「じゃらんコーポレートサービス」も展開。契約法人向けの限定プランを、首都圏をはじめ都市部のシティホテルを中心に揃えているのが独自の強みで、その数は3500施設の1万プランに及ぶという。大手企業を中心に契約社数はこの2年で5300社と2倍に拡大しており、今後も力を入れていく方針だ。

取材・記事:山田紀子

 

トラベルボイスより転載

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