過去のコンサルティング実績:売上増加分累計 330億6千万円(2025年8月現在)
【旅館再生】設計会社からの提案を見るときに、私が必ずチェックすること
ある宿さんで、ロビーのリニューアル工事に向けて設計会社数社から提案を出してもらいました。
とはいえ、潤沢な資金があるわけではありません。あらかじめ総費用の上限を伝えて、その範囲での提案依頼です。
でも、どれも想像以上のものが出てきました。
CADで作り込まれた実寸の完成予想図、ファサードデザイン……
「うわ、これはすごい。他の宿をぎゃふんと言わせられますね」なんて盛り上がる夢のある話もたくさん。
当社がリニューアルに関わるのは、だいたい売上が回復し始めた後の流れが多いのですが、当事者である宿の皆さんは、リニューアルに慣れていないことがほとんどです。
その分、設計会社からの提案の中に“隠れている追加費用”に気づけず、後から「泣き」を見るケースが多いんです。
そこで今回は、私が設計提案を見るときに最低限チェックしている3つのポイントをご紹介します。
① デザインと費用のバランスは本当に取れているか?
パッと見の完成予想図は、そりゃあ素晴らしいです。
でも私は「本当にこの費用でいけるの?」とすぐに疑います。
工事費はだいたいの相場がわかっているので、安すぎればどこかに“無理”があるし、高すぎれば“何か余分に盛ってる”と思って、提案の穴を探します。
最近は、手描きのスケッチではなく、完成予想図がきれいに描かれたCADの提案が主流です。納得させられやすいんですが、完成予想図はあくまで“理想形”。

部材の選定や、実際に選ぶ工務店の段階で、
「あれ?思ってたのと違う…」
なんてことが普通に起きます。
だから私は、最初の段階で
「本当?」「これ本当にこの金額で?」「どこまでが含まれてるの?」
とうるさい施主になります。でないと、あとで大変なことになるんです。
② 半年後、3年後、5年後……その状態は維持できるのか?
設計会社の提案は、ストーリー仕立てで魅力的に語られます。
「これが完成したら、お客さんがバンバン来るぞ!」と。
確かに、完成した瞬間はそうでしょう。
でも、オープン後に“想定外”が続出するケースを私は何度も見てきました。
- 吹き抜けに植えた竹が、1ヶ月で葉が落ちて“竹棒”だけになった
- デザイン優先で作ったラウンジが、フロントからの視界ゼロ
- 大きすぎる棚で、物が置けなくなった売店

オペレーションの視点が入っていないと、本当にズレた空間が生まれます。
さらに、使う部材によっては「強度」「耐久性」「汚れ対策」「日焼け」などの問題も出てきます。
たとえば子供の多い宿なら、思わぬところにいたずらされるリスクもありますよね。
完成は一瞬。でも運用は何年も続きます。
だから優先すべきは「見た目」ではなく、「運用」です。
③ 宿側は“その施設”をどう売るか、まで考えているか?
設計会社は、作ったら終わりです。
でも我々は、その施設でどう売上を作るかまで見据えなければいけません。
たとえば、ロフト付きの客室。
おしゃれでSNS映えして、10〜20代や子連れにウケそうですよね。

でも…
平日に旅行する10〜20代カップルって、どれだけいますか?
子連れファミリーが、そんなに平日に来てくれますか?
現実的に平日のメイン客層は30代〜60代。
その層にロフトって……要らないですよね。
デザインや仕様で“売れる客層”は固定されます。
そこを見誤ると、完成後に「売れない部屋」になってしまいます。
再工事、やり直しなんてしたくないですよね。
だからこそ、施工前の「売り方」と「ターゲット層」のすり合わせが不可欠なんです。
✅ 最後に
設計提案を見るとき、「夢」は必要です。
でも、夢を現実にするには現実的な視点と、地に足のついたチェックが欠かせません。
当社はその部分も全部やるから、一軒一軒に時間がかかるんです。
でも、それで後悔しない投資になるなら、それでいいと思っています。
リニューアルに関わるときは、ぜひこの3つを意識してみてください。
あとから「やってよかった」と言える結果に、必ず近づきます。