中小規模旅館 仮名P社

 

 

場所;中部エリア
部屋数;50部屋以下
コンセプト;未公開

 

 

 

 

 

 

 

 

『脱団体客』、『これからは個人客じゃないと埋まらない』と業界内で叫ばれて久しいですが、そんな流れとは正反対を向いて走り続け、そしてこれまで見向きもされなかった30室程度の中小規模旅館が団体客をガッチリと獲得した成功ストーリーです。

当社とP社様(以下、旅館P様)は、不意なきっかけでコンタクトをとることになりました。当社未契約のあるクライアント様からご連絡を頂戴し、『木曜日の朝9時に旅館で相談したい』とのことでした。そのお宿様は遠方だった為に、前日入りして近場の温泉地に宿泊することにしました。予約時に領収書発行の為に社名を申し上げて、当日旅館P様に行ってみると待受けていたかのように名刺交換をされました。それが当社と旅館P様のファーストコンタクトです。

チェックインから1時間ほどお宿の身の上話をされ、経営的に苦しいということでしたので相談に乗らせて頂きました。その日の宿泊者は私だけでしたので、ここぞとばかりに色々なお話を伺いました。借金の返済が難しいお話、集客が難しいお話、昔良かった時代の話など蓋を開けたら出てくるわ出てくるは。気がつけば夜7時を過ぎて夕食の時間でした。部屋食ではなく宴会場食であったのですが、大宴会場にぽつんと1人食事をするのはある意味貴重な体験でした。

食事をしていてひとつ気づいたのが、宴会場の大きさとその充実したスペックでした。200名以上入る規模と、非常にきれいな内装と重厚なパーテーション。経営者様に聞くと数年前に改装したばかりで、『いざ団体客を取るぞ!』と言うタイミングで周辺旅館ホテルも改装し、お客様を奪われた形になったそうです。そのまま時間を忘れて、10時過ぎまで話し込んでしまいまし翌日、朝食の塩鮭を箸でつついている時に、顧問契約のお話を頂戴した面白いお宿様です。

次のアポイントがございましたので即答はできませんでしたが、後日正式に契約をさせて頂きました。経営者様自身が何から取り組むべきなのか、優先順位の決定を決めかねていらっしゃいました。

経営が傾いた会社はどんな会社でも時間的な余裕はありません。極力無駄、ムラ、無理を避けなければいけないので、この優先順位の決定は需要項目です。

最初に私の口から出た言葉は、『まずは団体客をきっちり取りましょう!』でした。

団体客獲得に的を絞ったのは、周辺旅館が団体客取り込みに成功しており、その団体決定理由は主に『他に良い旅館が無いから』と言うことでした。ということは第一に、地位的な魅力が団体客を惹きつけており、お客様は旅館P様のもうすぐ目の前の来ている。第二に、地域内競争に勝てる良い旅館になれれば、目の前の『団体客をきっちり取れる!』という結論に至ります。

それだけの条件が揃えば、あとは『さぁ!やるぞっ!』です。

まず、最初に取り掛かったのが『お宿の通信簿』の作成です。改めて後日他のお客様(グループ客含む)が宿泊されている日程で試泊し、お客様の動き、表情、館内オペレーション、人員配置等詳しく調べさせて頂きました。

総合点は、47.8点。平均点を大きく下回る宿です。敢えて言うとすれば『成長の可能性は大きい』と言えます。これまでの努力の影は様々な面で見られました。しかし、どれもお客様には受け入れられる結果には至っていません。

施設部門においては平均点以上をクリアしておりますが、サービス及びネット部門においては低得点となっています。特にサービス部門においては接客のレベル向上が急がれます。中小規模旅館の心遣い風情は無く、大型旅館の雑な中にもしっかりと進行がされていく安心感はありません。大変中途半端な印象が強いです。食事部門についていても、見事に中途半端な内容は旅行会社担当者さんの厳しい目には耐えない内容です。比較的悪い部分が強調されてしまっていますが、改善するべき箇所が分かりやすい事は今後の方向性が明確になりました。

【部屋】手直しは頻繁に行われている感があり好印象
【風呂】全般的にきれいで、最新カランが設置されている
【料理】田舎旅館料理。地方性を除いてもおいしいとは言えない。
【外観】外観は玄関だけリニューアル済
【フロント】古臭く私物が並び汚らしさが見える
【ラウンジ】フロント同様に最大に良く言って『アットホームな』雰囲気になっている

そんなお話をしていると、経営者様から『突然ですが以前、別のコンサルティング会社にお世話になっていて、今の旅館の状態はほぼそのコンサルティング会社が作り上げたものなんです』と、唐突なカミングアウト。
そのようなケースにはよく立ち会うので驚きはしませんでしたが、1年数ヶ月の結果が『この現状』ということが驚きでした。逆にこの時期に知っておいて良かったです。

さて、当然の事ではございますが、『お宿の通信簿』以外にも詳しく状況分析調査を行いました。

立地面においては、●●市から車でおよそ30分程度で行ける観光温泉地内にある。近くに観光客向けの施設が多数あり、地域的魅力をアップさせている要因に数えられる。

設備面では、築30年を経過しており古さが各所に見えるが、何といっても宴会場はほぼ新品同様のハイスペック。備品等もテーブル宴会が可能な設備も揃っており、団体客に向けてのバリエーションは色々考えられる。

組織人事については、社員総数20数名で、部屋数規模からすると十分であるが、今後の団体戦略においてはアルバイト社員の増員も検討する必要がある。初見では問題無いように見えましたが、営業担当者にクレームが多いことがわかりました。組織図は存在していますが、営業分担や責任範囲が明確ではなく『やらされている感』が全員から感じられる状況でした。その『やらされている感』を一番出しているのが、営業セールスをしている営業マン3名でした。

ちなみに、過去の営業セールスデータの蓄積は一切されておりませんでした。この部分については、なるべく早い時期に結果を出して行きたい私としてはある種の『ショック』でした。ある程度の営業セールスデータがあれば、セールス方法や営業マンの特色、今後のアタック先などが明確に分かります。残念ですが、私がデータを収集しないといけないようです。

それから分析は、販促面に移りました。
売上の半分が団体客で、あと半分はネットAGTからの個人客で構成されていました。分母が小さくどこが良い悪いという判断が出来ない状況でしたが、ネット等での口コミ評価がネット販売にかなり影響していると見えます。

協定契約を結んでいるAGTは、リアルは●社、ネットは●社となっている。その他に大きなチャンネルとして周辺県の中小AGTがあって、そのエリアには直接企業セールスにも行っている。

団体向け商品については、四季に合わせて料理写真や内容を変えてはいますが、正直何が変わったかわかりませんでした。これを持って営業に回る営業マンは、ある意味可愛そうにも見えました。

以上の通り、決して下地が悪いというわけでは、ありませんが、やるべきことをやらずに過ごした10数年が現在の状況を形成しているようです。

ほかにもネット売上の向上やサービスレベルの改善など、個人向けにやらなくてはいけない事が多数ありましたが、どんな場合にも『できることから始める』が鉄則です。これまでに『できない事』を数々やった上で、現在があるのですから、一旦『できない事』を考えるのは止めて頂きました。

1年間の営業セールス計画を作る前に、やらなくてはいけない事がありました。それは、経営者様や社員の皆さんが心の根底に持っている『負け癖』直しです。
旅館P様はこの10数年の間、売上が過年度よりも上昇した事が一度もありませんでした。ずっと減少傾向にあったのです。その間かなりの努力をしていたようですが結果に繋がらず、『やってもやっても下がっていくという』負の連鎖の真っただなかだったのです。一度この負の連鎖に入ってしまうと面倒で、その連鎖スピードで回転していくのではなく加速していきます。時間が経てば経つほどその連鎖を止めるには大きな力が必要で、やってもやっても止まりません。負の連鎖に入ったことに気づくのが早ければ早いほど、連鎖を止めるのが簡単です。経営を苦戦している企業の多くに見られるのが、経営者様がこの負の連鎖に正面から向き合わないケースです。気付いていても何も対処せず、負の連鎖が加速したタイミングでコンサルティング会社を招集しないケースが多々あります。まさに旅館P様はこのケースでした。

『負の連鎖』に入っているので、本来皆さんが持っているポジティブさはもう数年前に薄れ、何を話してもネガティブ思考です。この状況を打破するために、『スモールマネージメント』の手法で改善に着手しました。

『スモールマネージメント』の最大の特徴は、大きく勝たずに小さく小さく勝つことです。小さな勝利を重ねていくことで『勝ち癖』を身に付けます。

『勝ち癖』を付けるのに必要な小さな勝利は、どんなものでも良いのです。
思案して最初に行ったのが、近所にある公園の砂場掃除でした。その砂場は、猫の踏んや壊れた遊具が混じっており、決して清潔で遊びやすいものではないと近所のおかあさん方の中で評判でした。旅館P様は、市の許可を得ずゲリラ的に大掃除を行いました。

インターネットで砂場の清掃方法を入手し、1●名かかりで砂洗い・砂振る・砂起こし・猫除けとプロ並みの仕事をこなしました。砂場はゴミなど一切取り除かれ、新しい砂を入れた様に見違える美しさになりました。すると、すぐにその噂は広まり、近所のお母さん方がお礼に昼食にたってきました。これまで『お客様に感謝される仕事』という事を忘れ、ひたすら経営者様の怒号が響く中、あくせくセールスをしていた営業マン達の顔が変わり始めました。

しかし、負の連鎖はこれだけでは止まりません。続けることが重要です。そこで今度は新たなる成功の為にチャレンジしたのが、お客様の滞在中に『良かった』と言ってもらえることです。ここ最近は個人のお客様のクレームが多く
、チェックアウト時に返金する事態も起きていたほどです。そんな状況の中、お泊りになるお客様の中の1組にターゲットを定め、チェックアウトで『良かった』と言ってもらう事にチャレンジしました。これは社員の皆さんの聞き込みの中で、お客様から『良かった』という言葉を聞いていないと言っていたからです。

ターゲットになる予約を頂いてからの約一週間、社員の皆さんはそのお客のことばかり話していたそうです。お気づきでしょうか?もう連鎖が止まっているようですね。また負の連鎖が動き始めないように、このチャレンジは成功させなければいけませんでした。社員の皆さんはそのお客様の為に、ありとあらゆる出来る事をやったそうです。しかし、チェックアウトの領収書をお渡しするまで『良かった』の一言は聞こえませんでした。残念がる社員の方々と経営者様がお客様の見送りに行くと、お客様から『こちらの宿を選んで良かった。また絶対に来ますね。』という言葉を頂いて、お見積もり後に社員の方々が泣いて喜んだそうです。お客様が喜んで帰って頂く為に真剣に考え、団結心を持つ本来の姿が出てきたそうです。
立ち会えなかった私が一番悔しい思いをしましたが、これをきっかけに旅館P様では正の連鎖(好循環)が回り始めました。

そのあと、営業マンの方々と酒を飲みに行き、色々なお話を聞く事で更に状況は見えてきました。営業マンの皆さんは精力的に営業に出回ってはいましたが、基本的なスキルとツールの見直しが欠如していました。経営者様には事あるごとに体育会系のノリで怒鳴られてしまうので、やる気があっても空回りしてしまっていたのです。そこで、3名の営業マンの方と同行営業に行き、営業スキルを確認しました。どなたも心のこもった話し方をして、嫌われるようなタイプではないのですが、エージェント担当者からは嫌がられている印象があります。ずばり担当者の方にお話を聞いてみると、『いつも同じ資料ばっかり持ってきて、お客下さいばかり言うから会いたくない』ということでした。聞いて見るものですね。どうせ嫌われるなら嫌われる理由くらい聞いておいた方が良いです。

次に別の営業マンと同行することにしました。その営業マンはPCでオリジナル資料を作ったりと若手らしい動きで良かったのですが、3名の中で一番売上が悪かったのです。はきはきしていて印象は悪くありませんでしたが、決定的に悪い点が2つ目に『何をしてもらいたいか言わない』です。

『20代の営業マンということで、エージェント担当者からは子供扱いされている』と本人は言っていましたが、その言い訳は簡単に覆りました。『担当者からどんなかをされても、目を見ながら話すこと』、『最後に5名の話で良いので見積もりに参加させてください』ということを約束させ、1週間営業に行ってもらいました。
するとどうでしょう、月間でも1本の見積もり参加があるかないかのその営業マンを名指しで、団体見積もり問い合わせが5本も来ているではないですか。5名の見積ではなく、どれも20名以上の話ばかり。

しかし、奇跡は続きません。これまで売上最下位20代営業マンが急に実績を残し始めてしまったせいで、他の2名が腐ってしまいました。2名には営業ツールの問題がありました。2名はワード資料も作れない年配者で、資料改善の余地はそこにはありませんでした。そこで、20代営業マンを中心に営業資料の改革に動きました。まずエージェント担当者からの率直な聞き込みを実施しました。

そこで得られた情報は、主にこのようなことでした。
『写真が古過ぎて他旅館の綺麗な資料と一緒に持っていけない』
『手作り感が出過ぎて信用性がない』
『料金表などの必要な情報が網羅されていない』

そこで私たちは全国の一流団体旅館のパンフレット資料等を集めて、自分なりに『その資料はなにが良くてお客様を取れているのか?』を探りました。そこで得られたデータを集約し、既存の旅館パンフレットを作っている業者ではなく、家電量販店チラシを作成している業者さんに発注することにしました。

こちらでは内容を申し上げられませんが、固定概要を覆す内容であったようです。

それから私も同行営業をし、販売マニュアルを定め、対象エージェントのカテゴリー分け等をしました。1ヶ月後の訪問では既にツール不足も改善されて、戦闘準備が整いました。

それからは計画作りの段階に移りました。行動計画を策定し、年間売上、営業予算を担当者ごとに決定し、全体計画を決めました。あとはひたすら徹底的に営業に回るのみです。

この結果、計画年度初月で15団体を新規獲得しました。

ここまでは団体客をがっちりと獲得したストーリーとなりますが、もちろんそれだけでは宿泊施設経営は成り立ちません。この他にもコンセプトメイクや、マーケティング、販売商品開発、ゼロ化、ライバル旅館調査、ネットサイトの改善、販売プラン開発、サービスオペレーション改善などを計画的に行っております。

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